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手術なんてそうそう増えるものではない。
だから新しく手術室の数を三倍に増やすなどという事は、常識的に考えれば、金をドブに捨てる様なものだ。
それなのにもう既に建築会社に発注し、明日着工なのである。
かなり急ピッチの工事だ。
(院長は俺の計画を全て見抜いているのか?見抜いているとしたら、これが悪どい犯罪である事も判っている筈だ。
なのにそれを黙認しようというのか?どうもあの院長は何を考えているのかわからん)
東郷は、全てを見透かしている様な院長の目が、とてつもなく恐ろしい。
(院長の掌の上で自分は踊らされているのではないか?)と、そんな気がしてくるのだ。
北川圭子がシャワーからあがってくる。バスタオルも巻かずにすっぽんぽんだ。髪だけハンドタオルで拭いている。
そして、するりとベッドに潜ってくる。
「ねえ、何深刻に考え事してんの?」「ん?いや何でもない」
「ねえ。今日は朝まで一緒にいられるの?」「ああ。久しぶりにぐっすり寝たい」
「なんかお疲れみたいだねえ。気になる事があるんでしょ?」
「まあ、色々とな。しかし悪い事じゃない。うまくいきすぎて怖いくらいだ」「へえ~流石ホムラの外科部長だね!」
圭子は東郷にキスしてくる。東郷は少し意外な顔になる。
「おい。あのな。前から聞きたかったんだけどな」「ん?何?」
「お前、俺の事、嫌じゃないのか?」「え?何で?」
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