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ここはお洒落な居酒屋バーとして有名な『安穏族』という店の店内。
大きなフロアがあり、カウンターがある。
通常は小さいテーブルが数台置いてあるが、今日は撮影の打ち上げに貸し切りにしてある為、
中央に大き目のテーブルが一つ置いてあり、そこに料理がバイキング形式で並んでいる。
有名芸能人が二十人くらい来ていて、既に皆食事を終えて、カクテルなどのお酒を飲んでいた。
「テレビでしか見た事の無い人ばかりだね」一十三はその場にいる有名人の顔を眺めているだけでも楽しかった。
矢張り華があるというかオーラが輝いているというか、一般の人と比べると魅力的な人ばかりだ。
「ね?撮影して良かったでしょ?」「うーん、まあね。あっ!しまった!」「何?どうしたの?」
「撮影で思い出した!このスカート着替えるの忘れてた!」
「ああ何だ。そんな事か。いいじゃん。貰っちゃいなよ。似合ってるよ、それ。じゃあスリングはどこにあるの?」
「えーと、あっ、思い出した」一十三は腰に手を回した。スカートの腰に挟んで引っ掛けていたスリングを手に取る。
「あちゃあ。ベルトを更衣室に置き忘れてるよ」「まあ、今度取りにいけばいいじゃん」「うん、そうだね」
「あら?ここで撃つ気?」近づいて来たのは五十嵐響子だ。隣にダンディな五十歳くらいの人がいる。
見るからに高そうなスーツだ。ブランド物に違いない。
「こちら、うちのプロダクションの社長の森田です」
男は名刺を取り出し一十三に差し出す。
「初めまして。森田兼良です」
「初めまして。司一十三です」森田は上から下までスッと一十三を観察する。「いいね」響子に微笑む。「でしょ?」
「うん。目に力がある。この子は大スターになる!」「私もそう思います」「一十三くん」「はい?」
「うちと専属契約してくれないだろうか?」「はい?」
「先ずはファッション雑誌、それからテレビ、ラジオ、色んな媒体に顔を売ってもらって、行く行くは映画や舞台、テレビドラマ等で活躍する女優になって欲しいんだ」
「私が、ですか?」「勿論、君だ」
一十三はプッと吹き出し大笑いした。
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