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「あ、スイマセン笑ったりして。社長さんも五十嵐さんも、買い被り過ぎですよ。私、演技とか絶対無理だし、
モデルとかカメラに向かって愛想振り撒くのも無理です。取り柄もこのスリングショットだけだし」
「うーん。君はモデルや女優の仕事を少し誤解している様だ。まあそれについては今度時間を作ってゆっくり話そう。
今日は折角だから色んな人と知り合いになるといい。あ、そうだ。丁度いい。
そのスリングショットをここで披露してくれないかな?」
「いやあ。こんな室内じゃ危ないですよ。壁に穴が空いちゃいます」
「ん?だってそれゴム銃だよね?壁に穴はあかないだろう?いくらなんでも」
「そうよ。私も見たいな。誘拐犯から助けてもらった時も私、気絶してたから一十三が実際に弾を撃ったとこ、見た事無いもん」
すると周りにいた男性アイドル二人が近付いてきて「俺たちも見たい!」と言いだし
「みんなあ、注目!今から司一十三ちゃんが神技を披露しまーす!」と大声で叫ぶ。
「一十三。もう断れないね」葉子が肘で脇腹をつついてくる。
「もう。判りました。やりますよ」
一十三はスリングを左腕に取り付ける。辺りを見回し「あ、そこの窓をあけてもらえますか?」と頼む。
近くにいる人が言われた通りに窓をあけた。「あそこに速度制限の標識が見えますよね?」みんな窓の外を見る。
「あの五十と書かれた丸い鉄板の標識かな?」
社長の森田が目を細める。
「はい、あれです。あれのゼロの穴の中に当てます」
一十三がそう言うと「あれは無理だろ」「いくらなんでもなあ」「遠すぎだろ」「ここから五十メートルはあるぜ」
「あのゼロの中だと、ここから見たら直径一ミリもないぜ。ピンポイントになる」等と皆、思い思いの事を口にする。
「まあまあ。いいじゃないか。遊びなんだから。じゃあ一十三くん、頼むよ」森田社長がその場を収めた。
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