第1章

6/39
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「あ、スイマセン笑ったりして。社長さんも五十嵐さんも、買い被り過ぎですよ。私、演技とか絶対無理だし、 モデルとかカメラに向かって愛想振り撒くのも無理です。取り柄もこのスリングショットだけだし」 「うーん。君はモデルや女優の仕事を少し誤解している様だ。まあそれについては今度時間を作ってゆっくり話そう。 今日は折角だから色んな人と知り合いになるといい。あ、そうだ。丁度いい。 そのスリングショットをここで披露してくれないかな?」 「いやあ。こんな室内じゃ危ないですよ。壁に穴が空いちゃいます」 「ん?だってそれゴム銃だよね?壁に穴はあかないだろう?いくらなんでも」 「そうよ。私も見たいな。誘拐犯から助けてもらった時も私、気絶してたから一十三が実際に弾を撃ったとこ、見た事無いもん」 すると周りにいた男性アイドル二人が近付いてきて「俺たちも見たい!」と言いだし 「みんなあ、注目!今から司一十三ちゃんが神技を披露しまーす!」と大声で叫ぶ。 「一十三。もう断れないね」葉子が肘で脇腹をつついてくる。 「もう。判りました。やりますよ」 一十三はスリングを左腕に取り付ける。辺りを見回し「あ、そこの窓をあけてもらえますか?」と頼む。 近くにいる人が言われた通りに窓をあけた。「あそこに速度制限の標識が見えますよね?」みんな窓の外を見る。 「あの五十と書かれた丸い鉄板の標識かな?」 社長の森田が目を細める。 「はい、あれです。あれのゼロの穴の中に当てます」 一十三がそう言うと「あれは無理だろ」「いくらなんでもなあ」「遠すぎだろ」「ここから五十メートルはあるぜ」 「あのゼロの中だと、ここから見たら直径一ミリもないぜ。ピンポイントになる」等と皆、思い思いの事を口にする。 「まあまあ。いいじゃないか。遊びなんだから。じゃあ一十三くん、頼むよ」森田社長がその場を収めた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!