第1章

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「凄い!一十三、かっこいい!」葉子が狂った様に喜んでいる。「この子、化け物ね」五十嵐響子は唖然として呟いた。 「あのう。こんなもんでいいですか?」周囲の人達の予想外の反応に一十三は顔が真っ赤になっている。 「俺達今日ラッキーだな」 「おお、神技をこの目で見た!」皆、興奮冷めやらぬ様子だ。 その後一十三は全員から質問責めにあう事になった。 大人気の一十三を見つめて、葉子は誇らしいのと同時に少し寂しい気がしていた。 なんだか一十三が自分だけのもので無くなっていく気がしたのだ。五十嵐響子は既に次の戦略を考えていた。 どうすれば最短スピードで一十三をスターへ押し上げる事が出来るかを。 森田社長と目配せをし、響子は森田を奥の個室へと導く。 二人は個室で密談を始めた様だ。 葉子はそんな二人に気づかぬふりをしていた。 (森田社長が本気になった。これで一十三は必ずスターになるだろう) 葉子は自分の狙い通りに事が進んでゾクゾクとした快感を一人味わっていた。 何だか人の運命を自分が操っているかの様な気持ちになっていたのだ。 一十三の方はというと、何の役にも立たないと思っていたスリングショットが、 こんなにも多くの人に喜んでもらえた事が、とても嬉しかった。 いつの間にか、自分が神託によって、世界最強の殺し屋を狩る運命にあるという事を、一十三はすっかり忘れていたのである。
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