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すると彼は、身体を折って私の隣に腰を下ろした。 どきっ。 こ、こんな、急接近……。 風に流されて、この人の髪からあまい香りがなびいてくる。 栗色で、少し猫っ毛気味な髪。 「どこから、来たの?」 「市内です。皆、学校の友達で」 「そっか――」 ザザン、ザザン。 押し寄せる波。返す波。 久しぶりに訪れた客人が嬉しいのか、波は私の友人たちに幾度も幾度もかかってくる。 じゃれあって脚にまとわりつく犬のよう。 私と、その男の人は、しばらく黙って海を見ていた。 友だちは海に夢中で、私が男の人と並んで座っていることなんて気づかない。
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