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能面のように表情のまったく変わらなかった女教師は当時、一体どこまで知っていたのか今となってはまったくわからない。
ただ、終業式前の日、いつものように声色だけとりつくろうと、
「あさってから、夏休みです。そして夏休み中にサナダさんは転校します、だからみんなでさよならの色紙を書きましょう」
と言ったのを覚えている。
そして次の日の終業式、彼女の最後の登校日だ。
すっかり無口になって、忘れていた彼女の声を僕が久しぶりに聞いたのは、下校時、教室に残っていた彼女がぼんやりと机の上に積まれた『みんなからのメッセージの込められた折り紙』を見ているときだった。
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