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「なあ、ちょっといいか」
終業式のあと、下校時。
なぜだったのだろうか、意味もなく学校に残って廊下をぶらついていたボクは渡り廊下でヒグチに呼び止められて、無人のはずの教室に戻った。
そのときサナダさんは窓から射す強い日差しに影を浮かべながら窓側の彼女の席に座っていて、クラスでも低いカーストだった僕たちは、ヒライさんやカっちゃんがあたりにいないことを確かめながら教室に入っていった。
サナダさんはこちらに気づくと、一瞬びくっとはねるようにおどろいたが、顔をゆがめると視線をはずし、机の上に積まれた『無軌道な現代美術』に視線を落とした。
それを見るとなぜだかボクとヒグチの足は止まってしまい、そこから彼女に近づけなくなってしまった。
「なあ、ぼくらのこと、怒ってる?」
間の抜けた声でヒグチは教室の端と端程離れた彼女に質問した。
すると何を思ったのだろうか、サナダさんはしばらく黙った後、引きつった笑みを浮かべながらこっちを向いて一言、
「まさかー」
と言った。
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