一之唄

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ポツ、ポツリ 頬に冷たい物が落ちて来た時、飛び起きた。 雨だ。 折り畳み傘は学校に置いてある。 辺りは既に暗くなっていた。 「はあ、暗いな。どうするか。人はいないようだ、建物のどれかを借りても怒られないだろう」 すぐ近くにあった建物の入口を探す。 恐らく緑色の扉を見つけ、ドアノブを回した。 「開いてる」 古い家なのか、扉が唸り声をあげながらゆっくりと開く。 中からふぅっとインクの香りがした。 何も見えない。 「扉さえ閉めれば奥まで行かず、此処で寝てもいいだろう」 腹が空になり悲鳴をあげる。 その声を聞かないように耳を塞ぎ、目を閉じた。
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