第1章

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今日も一日が終わった。放課後になると思わずそう思ってしまうけれど。本当なら、ここから始まるくらいなのにな。 「熊子ちゃんバイバイ」 「あっうーん、バイバイ」 私には部活もないから、後はそのまま家に帰るだけだ。寄り道するようなこともあんまりないし。 しかしどうにも気分が落ち込むぞ! こんなときは甘いものでも食べないとよくない。その甘いものを寄り道して食べるのも、友達がいないと気分的な問題で難しいんだけど。はぁ。 私を抱きかかえて運んでくれる友達がいないから、自分の足で歩いて帰る。 人通りの多い道を選んで帰ると何人もの人を見かける。みんな知らない人で、知らない人からすると私も知らない人。 誰も私のことなんて気にしない。誰か、私のことを気にしてくれる人がどこかにいるんだろうか。 一人でいるのを気楽だねって言う人がいる。それはそうかもしれない。 でも、一人でいると一人だからどこまでも悩んでしまうことだってある。 考えごとをしながら歩いていたら、もうその甘いものを食べたいときの寄り道先の前に来ていた。 サーティーンアイスクリーム。どうせ寄れないし、できるだけ視界から外してやり過ごそう、と決意したときだった。店内に見覚えのある人影を見つけた。 今日の、寝てた先輩とその先輩を迎えに来てた先輩だ。きっと2人で帰りにアイスを食べに来たんだ。 気付かなければ良かった。 やり過ごそうと決めていたのに、足を止めてしまった。そして、店内を見ている私は羨ましさとか色んな感情が混ざった複雑な顔をしてるだろう。 どうして私は立ち止まったんだろう……先輩達が羨ましかったから。私もアイスを食べたかったから。私もそこに混ざりたかったから! それに、今日なら音楽室で先輩を起こしたことを話題にできると思ったんだろう、私は。特別な友達もいない私は当然、先輩って存在も得意じゃないけど。 でも、声をかけるなら早くしないと。先輩達が帰ってしまう。チャイムは鳴らないけど、明確な時間切れはある。 それにそこまで強く思うことなら、誰かに背中を押してもらうんじゃなくて最後は自分で決めなくちゃ。 元々どうにもならないようなことなんだ、どうにでもなれ! どうにでもしてやるんだ! 店の中に入るのは、思っていたよりも簡単だった。だって、私は先輩のとこに行くんだから。
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