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「ひとくちちょうだい。交換しよ」
「いいよ、はい」
「…………」
「どしたのその顔」
りせ先輩と夏希先輩が当たり前な風にシェアしてるのにびっくりした顔です。でも、それくらいは普通なんだよね。女の子どうしだし。色々と感覚を忘れてるなぁ。
「トーリも食べる? ストロベリーはもう食べたから交換じゃなくていいよ」
「じゃあもらいます」
スプーンで夏希先輩のチョコミントをひとくちもらう。口に運ぶ。
「どう、美味しい?」
「……美味しいです」
こういうの久しぶり過ぎて、なんか照れるんだけど。なんか照れるんだけど、夏希先輩のくせに!
それからまた他愛ない会話に戻る。
こうして見てると、先輩達は本当に仲がいいなぁ。私、今さらだけど邪魔じゃないかな。当たり前みたいに受け入れてくれてるけど。
でもそれより、楽しいな。
「こういうのなんか楽しいですね。最近私、いつも一緒に過ごせるような友達がいないから……あ」
しまった。浮かれてた。
ほんとに親しい人にしかこういう話はしちゃいけないのに。そうじゃないと、引かれてしまう。
血の気が引いていくのが自分でも分かる。偶然と優しさで成り立ってた楽しさが崩れていく。
私はまた一人になる。
「熊子ちゃん」
りせ先輩の声に引き戻される。その声は落ち着いていて、私の不安を和らげてくれる。
真剣な目に見据えられて、私はなんとか踏みとどまってその目を見返す。
「なら、わたし達と一緒に帰りましょう? それで、今日みたいに寄り道しよう。熊子ちゃんさえよければ」
「りせ先輩……」
ちょっとだけ泣きそうになってしまったけど今度は耐えられた。返事しないと。
「先輩達のご迷惑でなければ、一緒に帰りたいです」
「迷惑なんて思わないよ」
「あたしもいいよ。まず同じクラスとか学年の友達を作ったほうが良いとは思うけどね」
「うっ……」
これは正論過ぎて泣きそうだ。心配してくれてるのは分かるけど。
「いいじゃない。先輩付き合いも友達付き合いと同じくらい大事でしょ? それに先輩とだって友達になれるよ」
「……りせの好きなようにしなよ」
夏希先輩が拗ねてしまった。りせ先輩が私と夏希先輩を交互に見ながらあわあわしている。
なんか、何だろ。
「…………あはっ」
「何笑ってんのトーリ」
だって、おかしくて。
「いえ、何でもないです。夏希先輩も、嫌なこと言わせてしまってすいませんでした。明日からその、よろしくお願いしますね?」
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