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それが途絶えたら、また静かな待ち時間。誰かを待つのは嫌いじゃない。
何を話そうかとか、今日は寄り道するのかなとか、色々と考えているうちに待っていた先輩達が来た。ここまで来て、約束のことと私のことを忘れられてないかななんて後ろ向きさが顔を出す。それを抑えて先輩達のところに近づいていく。
私から話しかける。
「先輩、探させてしまいましたか……?」
「あ、いたいた、熊子ちゃん。そんなことないよ、わたし達も待ち合わせるなら生徒玄関かなって思って来たから」
りせ先輩が笑顔を向けてくれる。名前を呼んでくれるだけで、不安が溶けてなくなるみたいだ。
「熊子ちゃんも、待たせちゃった?」
「いえ、私も今来たところです。ちょうど良かったですね」
ベタな台詞を返す。もしかして今の正解は「もうずっと待ってたんですからね」で、先輩に謝らせてしまうけどちゃっかり好意を伝えるみたいな駆け引きを……私には無理だ。
三人で話しながら帰る。みんな徒歩で通学してて助かった。
嘘みたいな夢みたいだ。
「でもどうして先輩達はそこまで私に優しくしてくれるんですか。私に何か弱みでも握られてるんですか!」
「落ち着いて熊子ちゃん。わたし達ほとんど初対面だよ」
「それもそうでした」
「あたしがトーリの弱みを握ってるならまだしも、その逆はないよ」
「どういう意味ですかそれ!?」
「そのままの意味だって」
「冗談とかじゃないんですね」
それから会話の流れで私は相談めいたことをしてみることにした。私の弱い部分の話だ。
「でも私、女の子と何を話していいか分からないんですよね。共通の話題がないんです」
「あたし達と話せてるのは?」
「それはそうなんですけど」
「んー、改まって考えてみると難しいね。考え過ぎちゃうと身動き取れなくなりそう」
りせ先輩が困ったように笑う。夏希先輩も考えている顔だ。
りせ先輩の言うとおりだと思う。理屈で考えようとすると駄目になる。
「そうだなぁ、会話はキャッチボールとか言うけど、勝ち方があるのよ。あたしは野球とか野球部とか嫌いだけど」
「そんなのがあるんですか、夏希先輩?」
サッカー部も嫌いだけど、と関係ないことも言いながら夏希先輩は言う。
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