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そんなタイミングで喧嘩しちゃったから、ついあんな事を言っちゃたんだ……
「美咲、俺たちもう無理だよ別れよう」
美咲は黙ったまま下を向いていた。
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてる。……けど別れない」
「もう、無理なんだよ。解放してくれよ」
「やだ。別れないもん」
美咲は「うん」って言わなかった。
俺はそれが、すごく嬉しかった。
でも、美咲が大切だったから俺なんかの物にしてちゃダメだと思ったんだ。
こんな、俺じゃ美咲と釣り合わないって。
もちろん、そんな事をそのまま言えないから嘘までついてさ……
「もう、美咲のこと好きじゃないんだ。ごめん」
美咲は見たことない様な顔で泣いて、「私の17歳から24歳の一番綺麗だった時間返してよ」なんて俺を責めたよな……
今となっては懐かしいけど、あの時は恐ろしかったよ。
結局、今の会社に内定が決まってよりを戻せたんだけど。
(だから今の会社に恩がある)
そう考えたら、17歳から29歳……
もう、30歳の誕生日だもんな。
俺は美咲の20代を全部もらっちゃったんだな。
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