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俺がまだ実家に住んでいたころは、美咲の誕生日を母ちゃんと祝った。
美咲は家族に誕生日を祝ってもらったことが無いと言ってすごく嬉しそうにした。
あまりに美咲が喜んで母ちゃんの料理を美味しい美味しいと食べるから母ちゃんは毎年、美咲の誕生日を祝いたがった。
就職して俺も一人暮らしを始めた。1時間もかかった美咲の家との距離は地下鉄2駅に縮まった。
「美咲、無理するなよ。俺も社会人になったんだしさカッコつけさせてくれよ」
「うーん。フレンチなんかより想史のお母さんの煮っころがしがいいもん」
「でも、ココってなかなか予約取れないらしいぜ」
1か月も前から予約した星つきのレストランをキャンセルして結局この年も俺の実家で美咲の誕生日を祝うことになった。
母ちゃんは喜んだが俺は少し複雑だった。
それから恒例になっていた美咲の誕生日も、俺の仕事が忙しくなると実家に帰ることは出来なくなって2人だけで祝うようになった。
母ちゃんから多少のクレームが来たが、来年こそはと言いながら随分出来ていなかった。
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