3

9/9
前へ
/56ページ
次へ
■ 美咲は仕事から帰ってくるなりシャワーを浴びて、相当疲れているようでベッドに倒れ込んだ。 俺はベッドの端に腰かけて彼女の髪を撫でた。 「なぁ美咲、明日の誕生日俺の実家でやろう?昔みたいに母ちゃんも祝いたいんだって」 「…………」 トゥルルルルルー ベッドのサイドテーブルの上で充電されている美咲のケータイが鳴った。 母ちゃんの名前が表示された。 「はい」 「美咲ちゃん、明日は美咲ちゃん誕生日でしょ?おばちゃん美味しいごはん作るから家に遊びに来なさい」 「あっ……でも申し訳ないです」 「何、他人行儀な事いってるの?おばちゃんも寂しいんだから会いに来てちょうだい」 「はい……では、お言葉に甘えます。仕事が終わってからお伺いします」 (おっ母ちゃん、ナイスなタイミングでアシストありがとう) 電話を切ったあと、美咲はすぐにまたベッドに横たわった。 ちょっと、顔色もよくないし仕事が忙しいのだろう。 「美咲?仕事忙しいのか?」 「………………」 美咲はすぅすぅと寝息を立て始めた。 眠っている筈なのに涙が目じりをつたって零れ落ちた。 「なんで泣くんだよ?」 俺は指を這わせて涙を拭った。 「絶対、明日は笑顔にしてやるからな」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加