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美咲は仕事から帰ってくるなりシャワーを浴びて、相当疲れているようでベッドに倒れ込んだ。
俺はベッドの端に腰かけて彼女の髪を撫でた。
「なぁ美咲、明日の誕生日俺の実家でやろう?昔みたいに母ちゃんも祝いたいんだって」
「…………」
トゥルルルルルー
ベッドのサイドテーブルの上で充電されている美咲のケータイが鳴った。
母ちゃんの名前が表示された。
「はい」
「美咲ちゃん、明日は美咲ちゃん誕生日でしょ?おばちゃん美味しいごはん作るから家に遊びに来なさい」
「あっ……でも申し訳ないです」
「何、他人行儀な事いってるの?おばちゃんも寂しいんだから会いに来てちょうだい」
「はい……では、お言葉に甘えます。仕事が終わってからお伺いします」
(おっ母ちゃん、ナイスなタイミングでアシストありがとう)
電話を切ったあと、美咲はすぐにまたベッドに横たわった。
ちょっと、顔色もよくないし仕事が忙しいのだろう。
「美咲?仕事忙しいのか?」
「………………」
美咲はすぅすぅと寝息を立て始めた。
眠っている筈なのに涙が目じりをつたって零れ落ちた。
「なんで泣くんだよ?」
俺は指を這わせて涙を拭った。
「絶対、明日は笑顔にしてやるからな」
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