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□ 今日は美咲の30歳の誕生日だ。 とうとうプロポーズするんだと思うとさすがに緊張してきた。 これで、美咲をあんな風に泣かせてしまうこともなくなるだろう。 プロポーズ、ちゃんと噛まずに言えるだろうか…… 一生に一度、どうせならかっこよく決めたい。 相変わらず美咲は元気が無いようにみえた。あまり遅くなると母ちゃんに悪いからと仕事終わりに直接、俺の実家に向かうと電話で言っていたから俺は俺で少し早めに家を出た。 久しぶりに乗る地元方面の路線に懐かしくて頬が緩んだ。 窓の外の流れていく景色を見ながら、学生時代に美咲に会うために何度もこの電車に乗ったことを思いだす。 さっきまであんなにたくさんあった建物が減って緑が多くなる。 会いに行くときのウキウキ感はちょうど田舎と都会の境界線のようなこの景色が変わる辺りからどんどん高まっていった。 逆に帰りの楽しかったという余韻が寂しいに変わるのもこの辺りだった。 「なつかしいな……」 遠距離恋愛ではないが会いたいと思い立ってすぐ会いに行ける距離ではなかった。夜中、美咲と電話で話していると無性に会いたくなって……でも終電はとっくに終わっていて早く一緒にいられるように大人になりたいと強く思った。 そんな夢を俺はちゃんとかなえられている。 日常に追われて忘れかけていた昔の気持ちを思い出しそれが俺の自信になっていった。 きっと美咲は「YES」と言ってくれるはずだ。 面と向かっては恥ずかしくて言えないが、美咲は絶対幸せにならなきゃいけないんだ。 あの子は頑張り屋ですごく努力家だから。 美咲は30歳になる前ってのに、こだわってたけど、これからずっと一緒なんだから結婚式とか婚姻届出すのは一ヶ月や二ヶ月ずれたってどうってことないだろ? これから一生添い遂げるんだから。 長い人生の一ヶ月や二ヶ月どうってことない。
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