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母ちゃんに会うのもずいぶん久しぶりだ。
美咲にプロポーズすると伝えたのは電話だった。
「もしもし、かあちゃん」
「想史、久しぶりね。変わりない?」
母ちゃんから電話がかかってくることは殆どない。たまに俺から連絡すると声色ですごく喜んでいるのがわかった。
「かわりないよ」
「あのな……母ちゃん」
俺は少し言いにくそうに間をあけた後に言った。
「美咲にそろそろプロポーズしようと思ってるんだ」
母ちゃんの声色はまた変わって泣いているようなものになり「よかった、よかった」と何度も言った。
今まで結婚に対してはなにも言ってこなかった母だがきっと心配をしてくれていたのだろう。
「半年後の美咲の誕生日に言おうと思ってる」
「それでね母ちゃん、今日指輪を買ったんだけど実家に届くようにしていいかな?東京の銀座で買ったんだけど仕事も忙しいしなかなか新幹線にのってここまで取りに来るの大変なんだよね」
指輪を買ったのは世界的に有名なブランドのエンゲージリングの店だった。近場でこのブランドの物を取り扱っている店を探したが近くになかったので日帰りで東京まで買いに行った。
母ちゃんは二つ返事で了承してくれた。
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