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美咲は立ち上がり食べ終わったお皿とマグカップを流しへ運んだ。 そのまま、俺の隣を通りすぎる。 「洗っていかないのか?」 「…………」 「しょうがないから今日は俺がやるよ」 「…………」 なんだ、「ありがとう」もなしかよ…… スーツの上着を羽織って、急いでるんだから話しかけないでとゆう雰囲気を出しながらタンブラーを手に取る。 コーヒーメーカーに残っているコーヒーを全て自分のタンブラーに注ぎ込み、鞄を持つと玄関の方へ足早に向かった。 あちゃー……これは相当、怒ってる。 俺も、朝はコーヒー飲むの知らない訳じゃないだろうに…… 玄関の扉を捻(ひね)った彼女に言った。 「鍵いいぞー! 俺が出る時、閉めるから」 ……ガチャリ 怒った様な音をたて鍵が閉められた。 「親切で言ってやったのに、怒ってる時は本当に可愛げがないな」 俺は、立ち上がり自分のコーヒーの作りはじめた。 ポタポタと黒い雫が落ちるのをダイニングテーブルにもたれかかったまま眺めた。 「なにをここまで怒らせちゃったんだっけか……」 ふぅーっと息を吐いてから、出来立てのコーヒーをすすった。 窓際に立ち外を眺めると、粉雪が舞っていた。 「積もらなければいいが……」 早足にバスへ乗り込む美咲がいた。 目を細めて、しっかりバスの扉が閉まるのを確認した。 美咲の30歳の誕生日まであと3日だ。それまでにはまぁ、仲直りできるよな…… 俺たちは長い付き合いなんだから。 この時はまだこれがいつもの喧嘩なんだと思っていた。
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