第一章

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一目みて、美しいお方だと思った。 漆黒の髪に藍色の目。 世のご令嬢が騒ぐのも分からなくもない。 だが、私はひっかかりを覚えた。 面影に覚えがあるのだ。私の慕う人によく似た・・・。 「.....様、リーザ様」 私の名を呼ぶ声がして顔を上げた。 黙り込んだ私を心配してくれたらしい。 「いえ、なんでもありませんわ。ただ・・・・・」 「ただ?」 ただ、何故この縁談が持ち上がったのか。 望めば、王族との婚約もできただろう。 聞けば、近隣諸国の有力な貴族との話もあったとか。 どうして、そのようなお方が私のような伯爵家の者と結婚するのか。 利益は明らかに他と比べて少ない。 むしろ、ウェルヘルム家の方しかないように思える。 さて、腹の内はいかなるものか。
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