お世話に…

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  「ここの森は特別なんですか?森守が沢山居るなんて…」 「儂らは森から外には出んからの他所の森が どぅだかは知らんが此処では其れが普通じゃ」 それからも森守が走り続けて小一時間位経っただろぅか 前方に所々ゴツゴツとした黒い岩肌の在る背の低い緑が生い茂る山間が見えてきた 「あの…俺が お世話に為る処って…」 「あの山の岩間を住み処にしておる中型の猫達じゃょ 猟場が森での お主の毛並みには保護色じゃし良ぃと思ぅての」 毛並みと聴いて己を観る 黒と灰のゼブラ柄 岩間や闇に溶け込む毛並み 「其処迄考えて頂けるなんて…」 「この森は人里から かなり離れておるから人間が来る事は無いが幼少の頃が一番人間に拐われる危険性が高いからのぉ」 「えっ!?」 「ぁ すまんのぉ お主は元は人間じゃったのぉ言葉を選ぶ可きじゃったか…」 「ぃぇ…人の柵が嫌で獣に為った様なものですからお気遣いなく…」 「ふむ しかし獣にも獣の柵が有るのじゃぞ?」 「良ぃんです…人のは見出だせなかったから種を変えたら見出だせるかなって…」 「見出だせると良ぃな 精進しなされ それと─」 歩を緩め見透かす様に 「─あまり猫被り過ぎなぃ様にじゃな」 「ァハハ…」 『解ってらっしゃるんですね…』 獣は敏感だから通用せんと思えと付け加えられ 森守は また歩を速めた ── ─ 山の斜面に一際大きな岩が見えてきた それを囲う様に中小の岩が有り その岩と岩の足元には隙間が見える 徐に、森守は足を止め 「さぁ 此処まで来れば安全じゃ 話は着けてあるでの 最初の試練じゃ」 と言って彼を降ろす 「は…はぃ…」 「あの大小の岩々の下が彼等の棲みかじゃ あの隙間の数だけ入口が有っての 中は入り組んで ちょっとした迷路に成っておる様じゃ 行きなされ」 と屈んで彼の目線の先を指さす 「有り難う御座いました」 「頑張りなされ」 入口まで来て中を覗く 薄暗く見通しが悪い 『俺オバケ屋敷的な所苦手なんですけどぉ…マジ怖ぇ~… いやいや此処は俺の棲みかに成るんだった入んないと始まんないょな…』 意を決して飛び込む 中に入って先ず視界が拓けた事に驚く 『ぁ そっか 俺猫じゃん 視界良好~ こりゃぁいぃね』 と陽気な気分に為った時 「コンコンコン」と岩を叩く音 ビクッ とし伏せる 「では またの」と外から声が聞こえた 『森守様ぁ 勘弁して下さいょぉ~ マジビビったからぁ』
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