夢遊病

4/7
前へ
/7ページ
次へ
「す、すみません。でも、何も覚えていないんです。」 私がそう言ってうなだれると、義母に 「あなたはおかしくなってしまったんじゃないの?病院へ行きなさい。」 と言われ、私もこれは重篤だと感じて、義母の言う通り、あくる日 精神科を受診したのだ。 「ストレスから来る物でしょう。」 そう言われ、とりあえず、その場はお薬で様子を見ましょう との事で、その日は薬をもらって帰宅したのだ。 私が帰宅すると、義母が待ってましたとばかりに玄関まで すごい勢いで駆け寄ってきた。 「あなた、私のお金を盗ったでしょ!」 いきなり、そう私を非難した。 「盗ってませんよ。そんなことをするわけがないじゃないですか、 お義母さん。」 「嘘おっしゃい!私の枕元の小物入れに入れてた2万円が無くなってるのよ!」 「盗ってません!私がそんなことをする人間に見えます?」 「だって、あなたは今精神病じゃない!夢遊病なんて精神病よ! あの球根を植えて寝たあとに、私が寝入った時に盗ったでしょ! 便利だわよね、全部夢遊病の所為にすればいいんだから! 返しなさい!今すぐ!」 「盗っていません!」 「いいえ!盗ったわ!返してよ、返せ!」 私は絶望的な気分になった。 義母はたぶん、ボケているのだ。 痴呆が始まったようだ。 私は勿論、お金なんて盗ってないし、だいいち母の枕元に 小物入れなんてないし、お金は全て私が管理している。 義母は機械に弱いから、いつも私がATMでお金を下ろして お金は全て金庫に入れてあるのだから。 私はこれから、痴呆が進む義母の面倒を見なければならないのだ。 興奮が冷め遣らないので、仕方なく私は義母に2万円を渡した。 そして、その次の日、義母は業者を呼んで自分の部屋に鍵をつけて、しかも、部屋に防犯カメラまで設置させたのだ。 当然支払いは私に回ってきた。 「うちには泥棒がいるからねえ。」 義母は私を正常ではなくなった目で見ている。 もう我慢の限界だ。 今まで義母のことを思い面倒を見てきたのに、いくらボケているからって この仕打ちはあんまりだ。 はらわたが煮えくり返り、またどうしようもない将来への不安が襲ってきたのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加