無口なあいつ

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私はラブレターの最後に自分の名前を書きました。 直接彼に自分の名前を言ったことはなかったのですが、会員情報を見ている彼は私の名前を知っているはず。 もし本当にこのラブレターが彼の元に渡ったら私はどんな顔をして彼に会えば良いのだろう。 もしかしたらもう彼と音楽の話をすることもなくなるかもしれない。 そう考えるとたまらなく怖くなりました。 私は机の上に転がっていた消しゴムを手に取りました。 名前を書かなければこれからも彼と音楽の話が出来る。 私が彼のことを好きだと言うことは伝えられないが、彼のことを好きな人がすぐ近くにいるということが伝えられればそれで良い。 そう思った私はシャープペンで書いた自分の名前を消しゴムで消そうとしました。 だけどそこで不思議なことが起こりました。 いくら消しゴムでこすっても文字が消えないんです。
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