3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ゲームセット 勝者! 由美子」
「「ありがとうございました」」
そんな活気あふれる声が聞こえる夕方、この時間は私たちだけの時間だ。
私は平日の夕方、昼間のありふれた世界とは隔絶し、テニスに打ち込む。部内での成績はまずまずだ。中学の時にはすぐにやめてしまったのに、入部してからもう丸1年になり、2年目の春がやってきた。まさかここまで続くとは思っていなかった。それもこれも、
「ほらいくぞ!」
「はい!」
「いいね! その調子! ほらもういっちょいくぞ!」
すらっとした体形で声もいい。われらの部長。私は彼に憧れてこの部に入ったのだ。そしていつか彼に追いつこうと、そんなことを考えながら、ずるずると時が経っていた。なんだかタイムマシンにでも乗ってしまったかのようだった。
部が終わると、みんなそれぞれが違う方向へ向かい消えていく。そんななかで
「おーい 由美子」
「わっ」
そうやって抱き付いてきたのは親友の葵だ。葵とは小中学校が一緒で、いわば幼馴染だ。
「驚いた。ショックで死んじゃったらどうするの」
「そしたらそんときだよ。それが死に時だったってことよ。大体いつも同じ行動をとってるじゃない」
「そんな些細なこと。すぐ忘れちゃうよ」
「わかったわかった。謝るから。いつもの場所いこ? ね?」
最初のコメントを投稿しよう!