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クラブが終わると、私たちはいつもマクドナルドにいく。私はチーズバーガーとスプライトを、葵は、フィッシュバーガーとコカ・コーラを注文した。そしてカウンター席で隣通しに座り、ウォークマンでお気に入りの音楽を聴きあうのだ。
いつものように二人で過ごしていたが、ふと葵が
「あのさ、由美子って好きな人いるでしょ」
「えっ、さっさぁね。」
「知ってるんだから、あいつのことが好きなんだろ」
「あ…、あいつってだれよ」
「キャプテンに決まってるじゃない」
「ブッ」
私は思いっきりスプライトを吹き出してしまった。
「ちょっと汚いじゃない」
「葵が変なことを言うからじゃない。まったく」
「で、図星なの?」
私は小さくうなずいた。恥ずかしながら、私は生きてから一度もカレシというものができたことがない。カレシ?枯れ死のまちがいじゃないの。そんな言い訳をしてずっと今日まで来ている。この年頃になって、いまだにセックスはともかく、彼氏がいなかった奴なんて誰もいなかった。少なくとも部内ではそんな清楚な女子は一人もいなかった。だから彼氏の作り方なんてわからなかった。黙り込んでいる私を見て、葵は笑いながら言った。
「まぁ叶わない恋じゃないかもしれないけど。私のおすすめは違うんだな」
「えっ」
「あなたにはヒロトがお似合いよ」
「えー、ヒロト?」
ヒロトというのは、私が苦手にしているタイプの男だった。キャプテンとは対照的で、根暗で、体も一切動かさないし、なんでこの部に入り続けているのかわからなかった。ただ、私が目を合わすと、小さくうなずいていつも逃げるように去っていく。私にはそれが馬鹿にされているとしか思えなかった。
「あんな、何も考えてもないやつ。おすすめなわけないでしょ。産廃処理はお断りよ」
「そうかな。あいつはあいつでしっかり考えてるってわかるけどね」
「いいや、絶対ない!」
「ずいぶんかたくなね。嫌い嫌いも好きのうちっていうけど」
「なにそれ、ふっるい。どこのババアのセリフだよ。てかあんたはどうなのよ」
「私は由美子が彼氏みたいなもんだよ」
「あ、ずるい!」
そんなこんなで話終わり、葵と別れた。しかしふと一人になった時ヒロトのボケっとした顔が見えていやな気分になった。なんでこんなことばっか考えてるんだろう、きっと頭もおかしくなってるんだ。そう思いながらやや駆け足で帰った。
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