鴨は突然、葱をしょって

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園長室から出てきた中川先生が、手招きをしてきた。 「はい」 主任の机に行くと、先生は大き目の封筒を出してきた。 「今日、市役所に行ったときに、子育て推進課で言われたんだけど。 来年度、市政70周年で、記念行事がたくさんあるらしくてね。 来年の秋に、市内の園児たちも絡んで、何か出来ないかって打診があったんです。 で、そのプロジェクトチームに、うちからも一人出すことになって、それを大井戸先生にお願いしたいんだけど、どうかしら?」 聞くだけで、面倒そうだ。 だいたい、あと一年もないというのに、このタイミングで何かを始めようなんて、お役所仕事もいいかげんじゃないか。 絶対、お断りだ。 「あ、園長先生も、あなたなら適任だとおっしゃっています」 外堀が、確実に埋められている気がする。 「もちろん、私たちも出来るだけの補助はしますよ。 特別手当も出ますし」 手当! それは嬉しい響きだ。 私はためらいもなく、うなずいた。 「やらせて下さい」
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