鴨は突然、葱をしょって

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別に金の亡者、というわけではない。 家も、貧乏ではない。 でも私にはお金が必要、というか、ある方が安心できる。 多分、中川先生は不思議に思ったはずだ。 なぜ、あの家の娘が、わずかな手当てに飛びつくのかって。 でも大人の対応なのか、先生は軽くうなずいただけだった。 「では、詳細はこの中の資料にありますので、よろしくお願いしますね」 「はい」 それにしても、プロジェクトとは、なかなか大層なことをするなあ。 そのわりには、ギリギリ駆け込み的な立ち上げ方だけど。 「ねぇねぇ、何の話だったのー?」 加奈が興味半分、お義理半分に聞いてきた。 「ああ、何か、来年の秋に、市政70周年記念イベントをやるんだって。 そのプロジェクトチームに入れって言われた」 「へー、お役所ってそういう式典、大好きだよねぇ」 私はうなずきながら、資料を出して、軽くパラパラとめくってみた。
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