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運転席に座ると、殺風景な車内が、寒々しかった。
綾と別れてから、いつ、玲実が乗ってもいいようにって、中をきれいにした。
片づけが苦手な俺にしては、頑張ったと思う。
あいつに告白したのも、この中でだった。
横に、手が届く距離にあいつは座ってて。
困ったように俺を見る目が、それでも真っ直ぐさを失っていなくて。
俺のこと、真剣に考えたって、言ってたな。
男として意識して、あいつの心の中に、俺がいたってことだよな。
フーッと大きく息を吐いて、ステアリングにもたれかかる。
長年の俺の想いは、まったく報われなかったわけじゃなかった。
玲実。
好きになって、良かったよ。
女は失恋したら、髪を切ったり、やけ食いをしたり、買い物をしたりして、気分を切り替えるのかもしれないけれど、俺は整理整頓に走った。
まず、長年、母親に説教のネタを提供していた自分の部屋を、片づけることにした。
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