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こいつは、人の生傷をえぐりやがって。
俺が睨みつけても知らん顔で、弟は恩着せがましく、疲れたなあと言いながら、腰をたたいてみせる。
「あら、あんた、大井戸さんのお嬢さんにふられたんだ?」
母親までもが、とどめを刺しに来る。
っていうか、何で俺の好きな相手を知ってるんだ?
「前にうちに来ていた時に、バレバレだったわよ。
あーんな綺麗な子が側にいたら、そうなるのも仕方ないだろうけどね」
「うるせー」
あいつは、顔だけじゃねーよ。
俺がふてくされていたら、母親がポンと背中をたたいた。
「あんただって、いい男だよ。
息子じゃなかったら、惚れてるかも」
「はあ?こんなオバサン、お断りだよ」
そう言いながらも、俺は、ちょっと笑えている自分に気が付いた。
まだ、しばらくは好きでいてもいいかな。
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