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「ごめんなさい、ご縁がなかったと思って」
私は、ニコッと、でも申し訳なさそうに、微笑んで見せる。
「でも!」
「やっぱり、どうしてもそこは譲れないんです」
少しでも、脈があるように見せてはいけない。
徹底的に、お断りだ。
「さっき、あなたの連絡先は着信拒否設定しましたので、この場で私の連絡先を消して下さいます?」
茫然としている彼のスマホを、テーブルから取り上げる。
少しでも、足がかりとなるものを残すべからず。
相手は、催眠術にでもかかったかのように、言われるままに消去している。
「それじゃ、これからも、お仕事頑張ってくださいね」
極め付けに、自分でもとっておきだと自負している笑顔を残して、立ち上がった。
ここのお茶代くらいは、払っておく。
今まで散々、おごらせてきたから、最後くらいは出しておかないと、後で腹を立てて来られても嫌だし。
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