彼の視点による終章

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今まで、恋愛経験はそれなりに積んできていたけど、遠距離というのは初めてだった。 予想もつかないことばかり。 男のプライドってやつで、彼女の前ではカッコつけたけれど、実際には不安だらけだったんだ。 きっと、俺が止めたら、彼女は行くのを止めるだろう。 だけど、後悔して、いつか俺の元から離れていってしまうかもしれない。 それくらいなら、遠くて細い頼りない糸でも、彼女とつながっていたかった。 女々しいと自分でも思う。 「何とか、なるもんよ」 妊娠がわかったからか、以前よりも柔らかい顔になった姉貴が、悶々とする俺に言った。 「私だって、乗り越えられたんだから」 姉貴は結婚前に、旦那としばらく遠距離になっていたことがある。 「姉貴は、3カ月だっただろ。 しかも後半は、連絡が来ないーとか言って、めそめそしてたくせに」 「うるさい! ……でもね、先がわかっていれば、大丈夫じゃないかな。 聖は、いつ帰ってくるのかわからなくて不安だったけど、玲実さんは1年で帰るって決まったんでしょ?」 それも複雑な心境の一端なのだ。
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