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「え!T大?
じゃあ俺の妹と一緒だな!」
すっかり機嫌の直った羽田さんは嬉しそうに言った
「妹さんいらっしゃるんですか?」
「おうっ
ちょうど颯太くんと同い年だよ~。ちなみに学部は経済学部」
「え、俺もです」
俺の通う大学は一応マンモス大
学部が同じだからといって知り合いという可能性は低いのだが、羽田という苗字に思い当たる人がいて俺はさらに質問を繰り返した
「もしかして羽田美久ちゃんですか?」
確信はないけど…と思いつつもそう言うと羽田さんはきょとんと目を丸くして、そして次の瞬間にはキラキラと光らせる
「マジ!?美久のこと知ってんの!?」
「入学してからの知り合いでサークル仲間兼飲み友達です!」
「マジか!!」
意外な事実に世間は狭いということを実感しつつ、俺も羽田さんも若干興奮しながら美久ちゃんについての話をした
そして意外にも羽田さんはけっこう重度のシスターコンプレックスだとわかった
「うわぁ…なんだか羽田さんサイズが1人増えただけでフロアのファンシーさが増した気が……」
「ほら、始末書と一緒にこれも提出しておけ」
「あ、すみません…」
「次は気をつけろよ」
―――稲葉はふと金平の言葉に棘があるのを感じて横目で彼を確認する
彼のすぐ傍では颯太と名乗る大学生と同僚である羽田が楽しそうに談話しており、その様子を金平は面白くなさそうに見つめていたのだ
(…あ、そういうことか?)
なんとなく察したその関係性
しかし公私混同を嫌う彼が職場に連れてくるほどとは、いったい―――
「颯太、終わった」
「あ、はい!」
俺は哲さんに呼ばれてパッと振り向く
そこには少しだけ機嫌の悪そうな彼が立っているのだった
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