再会は偶然でした。

54/74
前へ
/187ページ
次へ
「…んっ、ちょ…」 触れるだけだったのが、いつの間にやら舌を差し込まれ。 熱い塊が俺の咥内を蹂躙する。 「ゃ、…あの、ここ……外っ!!」 哲さんの胸板を押しのけ無理やり引きはがす 節度という言葉を知らないのか、この男は。 ここは哲さんの家でもなく ましてや彼の仕事場。誰に見られるともわからない状況でさすがにこれは危険すぎる。 「外だから謝っておいただろう?」 「いやそういう問題じゃ…ってかさっきのはそういう意味ですか。 ここは哲さんの職場です。いくら駐車場といえど誰に見られるかもわからないんですよ?」 「気にしない」 「気にしてください!」 ぴしゃりと言い放つと哲さんは溜めていた胸の内からすべて吐き出すように長いため息をついた。 そうしてトン、とハンドルの上部分を両手で持ちながらそこに額をつける。 「…哲さん?」 どこか具合でも?と言葉を続けようとした俺を遮るようにチラリと視界だけこちらによこす 流し目が、かっこいい。 「妬いた」 「…なににですか」 「羽田と仲良くしていることに、妬いた。 俺の前じゃあんな風に笑ったことなんてないくせに。」 今にも唇を尖らせそうな物言いと表情 なんだこれ、なんだこれ!!? もういい…と小さく呟いて俺から目を逸らした哲さん その耳は僅かに赤みを帯びていてこの言葉が嘘ではないということが明らかだった
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

851人が本棚に入れています
本棚に追加