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「なーなー勇ぅー」
「…なんですか羽田さん」
一方フロアに残された2人は自分たちのデスクにそれぞれ着きながら、休憩がてらのコーヒーを背中を向け合って飲んでいた
ふざけたような羽田の問いに稲葉は律儀に振り返り、その小さな背中を見る
「あの2人デキてんのかな?」
「ブフォッ」
「うわ、きったねー」
咳き込んだ音と同時に羽田は怪訝そうな顔で振り向いた
ゲホゲホと激しく咳き込む稲葉の丸まった背中を叩いてやりながら、羽田は先ほどの上司である金平を思い出す
(あの人は来るもの拒まずのバイだけど、ありゃ相当お気に入りだな)
いつだったか夜の街で見かけた彼の隣には、その彫刻のような整った顔立ちとスラリとした身長にも引けを取らない美しい女性が立っていたことを覚えている
羽田はそれを見て不自然だとは感じなかったし周りからどう思われているか、ということまで考えていそうな金平の抜け目のなさも感じた。
ただ1つ言うならば、金平が相手の腰に手を回そうと女性が金平の肩へもたれかかろうと、2人の間に流れる空気は決して恋人同士とは思えなかったということくらいか。
(随分と斜め上の方向に転換したな…それとも元々そういうのがタイプ?)
年下で尚且つ童顔
一般常識はありそうなどこにでもいそうな男の子
強いて言うなら、割と整った顔立ちをしているということくらいか。
それがあの百戦錬磨の伊達男を仕留めたとは…
「俺も相手してもらおうかな」
口の端を僅かに上げて微笑んだ羽田に、稲葉はギョッとして目を見開いた
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