再会は偶然でした。

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いつの間にか車は高速に乗り始め、いったいどこまで行くのかと哲さんの横顔を見つめる。 不安や不信感は一切なくて、どちらかと言えば”どこに行くのだろう?”と遠足前の子供のようなワクワクとした気持ちのほうが勝っている。 スピーカーから流れるのは哲さんセレクトの洋楽 ノリのいいものから穏やかなものまで。俺が触れたことのないジャンルで、タイトルや曲そのものはほぼまったく知らなかったが哲さんとの会話のBGMにはもってこいだった。 「哲さんの趣味は何ですか?」 長い移動時間 俺は昨晩聞いた以上のことを哲さんに質問した。 例えば趣味はドライブで、好きな動物はネコ ちなみに実家で2匹飼っているらしくて帰省するたび丸くなっているのが可愛いんだとか。 音楽は洋楽ばっかりだけど邦楽も人並みには、と。 俺の中の”哲さん”という名の器が、どんどん哲さんで満たされていく。 知りたいと思うことを知ることができるのは嬉しいし、それが気になる人のことだったら尚更嬉しい。 その人が何を見て、何を考えているのか、その片鱗に触れることができるとなんだか今まで以上にその人の内側を理解できたようで、心の奥がむず痒くなって、あたたかな泉が湧き出たような気持ちになる 「それじゃあ次は…あ、哲さんの家族構成は?」 どうしてこの質問がこんなに後回しになってしまったのか、俺はそんなことを思いながら軽率にそしてにこやかに哲さんに問いた 「母親と妹が1人。父は幼いころに他界してしまった。 両親ともに警察官でな。職務を全うして、殉職だった。」
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