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駐車場に車を停めて、俺たちは砂浜へとおりた
胸いっぱいに空気を吸い込むと普段は感じることのできない潮の匂いが肺の中を満たしていった
海に来るのはかれこれ2年ぶり
去年はなんだかんだ遊びに行けなかったので、久しぶりの海に俺のテンションはだだ上がり
海開きするにはまだまだ早いこの季節
少し暖かくなってきたとはいえ海に入ろうなんてする人はいないから、自然と人も少ない。
砂浜の上を歩くとスニーカーの裏がキュキュッと鳴って、俺は思わず駆けだした
「哲さん!海!入りましょ!海!!」
「楽しそうだな」
「すっげー楽しいです!」
波打ち際まで来ると俺はたまらなくなってスニーカーも靴下も脱いで、パンツの裾を捲り上げた
そろりそろりと波に足をつけるとやっぱり刺すように冷たくて、さすがに泳げないななんて思いながらざぶざぶと進んでいく
「うわー、冷たい!!」
「転ぶなよ」
「哲さんも入りましょうよ!」
「風邪ひく」
煙草を咥えながらこちらに近づいて来る
潮風の強いここではなかなか火はつかないだろう
案の定、ライターをカチカチと言わせてつかない火を懸命につけようと躍起になっている。次第にイラついてきたのか眉間に皺が寄っていて、いつもは読み取りづらい哲さんの表情が手に取るようにわかって、俺は思わず吹き出した。
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