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僅かに離れた隙間を埋めるように首に回した手に力を込めると、哲さんはピクリと一瞬だけ震えて固まった
「颯太?」
驚きの混じった声
横目で哲さんの顔を見つめると丸くなった目と目があった
「積極的だな?」
「なんとなく、です」
「いい子だ」
嬉しそうに細められて、哲さんの体がまた離れた
ア、、と思ったすぐそこで重なる唇
待ってましたというように深く、ねっとりと絡みつき、俺は自ら進んで哲さんを求めた
「明るいとそそるな」
まだまだ日中と呼べる太陽の上がった時間
いつもより刺さる視線に俺は目を逸らして顔を隠すように手で覆う
「やめてください…」
「可愛いよ」
囁くように、歌うように、言葉を紡いで
哲さんは俺をとことん甘やかしドロドロと溶かしてしまう
そのうち形状記憶もできなくなって、本当に溶けてしまったらどうなるのだろう?
まるで禁忌を犯した人魚のように水に溶けてしまったら…
だれの記憶にも残らずただ自分の中にだけ哲さんへの熱を抱えて消えてしまうのだろうか。
それはそれでこの不毛な恋の終わりとしては美しく、華やかな最後かもしれない。
「…ンッ…」
なんて。
いつもは思わないような、こんな気持ちの悪いことばかり考えるのはきっとこういう場所だから。
そして俺が気づいてはいけない気持ちに気づいてしまったから、なんだろうな
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