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(死にたい………)
俺の横をスペースを空けて通り過ぎていく人たちの足音を聞きながら、俺は恥ずかしさのあまり顔を上げられずにいた。
いや、ないだろ。ほんと。
ハタチ超えた男子学生が駅前で顔から転ぶとか。ほんと。
(もーー、どうすっかなマジで…)
ぐっしょり濡れる服と髪
もうドラマどころじゃないという心情で俺は半泣きになりながらも立ち上がろうと腕に力を入れた。
「…大丈夫か?」
えっ
かけられた声は確実に俺へのもの。
パッと顔を上げると俺に向かって手を差し伸べるイケメンなオニーサン。
「………っ、お、俺急いでて!やべー恥ずかしいーアハハ……」
暗くてあんまりよく見えないけど、絶対イケメン。
前髪から垂れる滴が色っぽい。
そんな人に俺の恥ずかしい姿を見られて、果てには声もかけてもらって
もう俺のHPはゼロに近い。
手を取ることなく立ち上がった俺を無表情で見つめるオニーサン。
んん、なんだこれ怖い。
「え、っとあの、声かけてくれてありがとうございました。
俺恥ずかしくて死ぬかと思いました。」
ただジッと見つめられるだけで何も言われないので、気まずくなって俺はへらっと笑って見せる。
(もう絶対ドラマ間に合わないなー)
あー…、と立ち去るタイミングを完全に見失った俺に、オニーサンはようやく声をかけてくれた。
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