再会は偶然でした。

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「おうふ…俊平くんこんな遅くにドウシタンダイ」 「どうしたじゃねーよ。昨日からまた家帰ってないし連絡しかないし心配すんだろ!」 「や、僕もう22歳…あ、ハイ。その、泊まり行ってて…」 「どこに?誰んとこだよ」 俺の腕を力強く掴んだ俊平に俺は若干の違和感を覚える いつもとは違う彼の様子に俺は些か不安になりながらも、哲さんを待たせているという状況が俺を焦らせる。 「俊平の知らない人! でも怪しい人とかじゃないからさ!」 「……女?」 手を振り払って俺は俊平を押しのけて靴を履いた 彼の静かな問いに肩が震える 「ちょっと駅前で知り合った男の人」 「……男?」 いつになく低い声に俺は思わず振り返る 眉間に皺をよせて首をかしげると、彼もまた眉間に皺をよせて怖い顔をして俺を睨んだ 「…悪い俊平、その人のこと待たせてんだ。月曜話すから、今日は勘弁して。」 どう説明していいか俺にはまだわからない 逃げるように玄関を出ると、俊平も渋々といった様子で外へと出てきた。 荒々しく鍵を回してポケットに突っ込む 挨拶もなしに俺は階段を下りると俊平はまるで飼い主を追いかける犬のようについて来る 「…俺には話せねーような相手?」 「いやだから月曜まで待ってって!」 ありえないほどにしつこい俊平に俺は戸惑いを隠せない いつもはあっさりしていて、俺からべたべたするほうが多いくらいなのに。 俺は哲さんの車に勢いよく乗り込んだ。 驚いた彼の表情を見ることもできず、ただ黙って俯いた。 「大丈夫か?」 彼の声がかろうじて俺の耳に届く。 哲さんは車の外、階段近くに立っている俊平と俺を見比べて疑問の声を上げた 「出していいのか?」 「お願いします」 ゆっくりと走り出す車 バックミラーを覗くと小さくなっていく俊平が暗闇の中からずっとこちらを見ていた。
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