再会は偶然でした。

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「…ありがとうございました」 リビングに戻ると哲さんはテレビを見ながらビールを飲んでいた 部屋着姿の彼の横顔を暫し見つめて、そっとため息 同じ部屋にいることが疑問なくらい、哲さんはかっこよくて綺麗な人だ。 不自然に空いたソファーに座る哲さんの隣 ここに座れと言うことだろうかと思案するが、俺の言葉に何の反応も示しはしないのでどうしていいかはわからない 動かない俺に痺れを切らしたのか哲さんは自分の隣をトントンと叩いた 俺は”待て”をされていた犬のように飼い主が出してくれた”よし”に喜んで従う ちょこん、と俺は哲さんの隣に座った その距離およそ30センチ 「…」 ただお互い何も言葉を発さなくて 哲さんとの沈黙を気まずいと思ったことはないのだが、今だけはとてつもなく空気が重たく感じた
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