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「さっきのやつ、お前のこと好きなんだな」
何の前触れもなく発した哲さんの言葉に俺はぐりん、と彼の横顔を凝視するように首を回して見つめた
哲さんの視線は動かずテレビを見ている
ただ彼の瞳も動くことはないので映像を目で追っているかと言えば違うのかもしれないが。
「さっきのって…俺の友達ですか?」
「ん」
もう残りが少ないのか哲さんは手に持った缶ビールを大きく煽りながら飲み干した
ゴクリと上下に揺れた喉に俺も唾をのみ込みながらまた彼の横顔へと視線を戻す
「好きって、いうか…そりゃもちろん高校からの大親友ですし好かれてはいると思いますけど、なんかその言い方だと語弊が生まれるかと…」
「そう思っているのはお前だけだろう」
「……え…?」
指すような言葉と交わらない視線
2人の間に空けられらた距離の分だけ心も離れているようで、空しい
それに俊平のことも…
哲さんの言葉の意味を理解することのできなかった俺は考え込むようにソファーの上で体育座りをして膝の上に顎を乗せた
この場には不釣り合いなバラエティ番組の笑い声
いつもは好んで見ているのに今は酷く耳障りだった
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