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「…俺と、体を重ねることは嫌か?」
暫くの沈黙の後の
小さな、小さな、声だった
体育座りをした俺はパッと顔をあげて哲さんを見つめる
テレビを見ていたと思っていた彼の瞳は、しっかりと俺を見据えていた
「っ、!ぃ、イヤとかは、な、い…ですけど……」
その目がなんだか切なくて、
見たことのない哲さんの一面に不謹慎ながら俺の心臓は跳ねあがる
ドキドキと音を立てる心臓を悟られないように俺は勢いよく目を逸らした
「…そんな顔、アイツにも見せているのか?」
スルリと頬を撫でられて、そのまま哲さんの方を向くように方向転換させられればより一層俺の心臓は音を立てる
ついでに言えば耳も顔もきっと赤く染まっているだろう
男らしい顔立ちが寂しげに沈んでいる。それを見るだけでなぜこうも緊張し、体全体が震えるほどに興奮するのだろうか
「そっ、そんな顔ってどんな顔ですか…
ていうかいつもは俺、こんな挙動不審な態度じゃないんですよ…
なんか、もっと、余裕ぶってて…でも哲さんの前だと気持ちがいっぱいいっぱいでなんかもう心臓が持たないっていうか……」
上ずった声、流れる視線
口早にそう言えば哲さんは黙ったまま、俺の頬に添える手に力を入れた
チラリと彼を覗き見ればどうしてか目を丸くしてやはり俺を見つめている
(…あ、目合った)
そう頭で認識した次の瞬間には
雄の顔をした哲さんに噛みつかれるようにキスされていた
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