石鹸の銘

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店の奥へと誘われ、俺はついて行ってしまった。 そこにあったのは、『石鹸の銘・極』だった。 「これって?」 「怪しいと思いでしょうが、私には見えるんです。あなたが小説家を目指している姿が」 ドキッとした。 女性店員の言葉は当たっている。確かに、俺は小説家になろうと努力している。 だがしかし、小説大賞に応募してもまったくダメだった。 「どうやら、的中しているようですね。なら、これをオススメしますよ。これは、才能を開花させる石鹸を作ることが可能なんです。どうです、購入してみては」 「ええ、まぁ。それが本当ならいいのですが。けど、これそうとう値段高いですよね」 「いえいえ、そんなことはありませんよ。今セール中ですから一万円で購入できますよ。お安いと思いますけどいかがですか。あなたはベストセラー作家になれるでしょう……一度はね」 うーん、確かに。 すべてが本当ならの話だ。 どう考えたって怪し過ぎるだろう。これは新手の詐欺なんじゃ。 でもなぁ、ベストセラー作家かぁ。 一度は味わいたいものだ。 そう思っていたのに、結局は店員に言葉に言いくるめられてしまった。 この手に『石鹸の銘・極』が。
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