石鹸の銘

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三か月後、俺はデビュー作で直木賞にノミネートされた。 惜しくも受賞は逃したものの本の売れ行きは倍増して気づけば三十万部達成していた。 だが、俺の快挙はそこまでだった。 石鹸を使い切ってしまい効果はすぐに消え去った。 石鹸専門店に出向くもどういうわけかその店がみつからない。 自力で書き上げた二作目は悲惨なことになっている。 巷ではまぐれだったんだなと囁かれ、出版社からの声もかけられなくなってしまった。 世の中とはやっぱり厳しいものだ。 いい夢を見させてくれたと思えばいいと納得させようとしたが無理な話だった。 もう一度、もう一度、俺に才能をくれ。 石鹸、石鹸、石鹸。 どこに行けばあのキットを買える。 誰か教えてくれ、お願いだ……。
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