One

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One

私は眠っていたのだろうか。 あれは・・夢? だけど。 視線を落とすと、相変わらず、冷たいテーブルの上には、先ほどのスティックが、ちょこんと鎮座している。 彼女は恐る恐るソレを手に取る。 ひんやりとした感触。 口紅? キャップを外すと、なんとも言えない甘い香り。 少しラメの入った、控え目なヌードカラー。 「た、ただの口紅じゃない・・」 フッと、肩の力が抜けた。 バカにされたのだ、と思う。 こんなところで、ひとりぼっちで泣いている自分をからかって。 「そうよ。だって・・」 あの人確かにこういった。 貴女の願いが叶うモノよ そんなこと。 あるわけないじゃないか。 バカみたいだ。 しばらく躊躇い、でも彼女はそれを手に取り、バッグに滑り込ませた。
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