Two

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Two

昼休み。 ランチを終え、化粧を直す前に個室に入る。 と、聞き慣れた声。 後輩の理緒だ。 「やっぱカッコイイよー、七地さん」 「理緒、狙ってるの?」 「だって、イケメンだし、仕事できるし、優しいし、非の打ち所がないじゃん!」 「確かにー。でも、彼女いるって聞いたような」 途端に理緒の声のトーンがさがる。 「知ってるよ。・・ウチの課の仙道 朱里(あかり)さん」 「えっ?マジで?!全然そんな素振りないからわからなかった」 相手が驚いているのが、声でわかる。 「でも、雲行き怪しいし」 「それって、別れそうってこと?」 「んー、わかんないけど、勘」 「なにそれ」 2人が出て行っても、朱里は個室から動けなかった。 「側から見ても終わってるのか、私達」 ハハッ、と朱里が空笑いする。 「バッカみたい・・」 頬を伝う涙を指で拭う。 「皓太の・・バカ」 バカ・・ バカは私も一緒か。 朱里がのっそりと個室から出る。 鏡に映る自分の顔。 目は腫れ、鼻が赤い。 化粧も剥がれていた。 ポーチを掻き回すと、指先にひんやりとした感触。 あ・・ 銀色のスティック。 朱里は、躊躇った末、ルージュを引いた。 思ったより、伸びの良い艶やかなベージュ。 ラメがキラキラと光を反射している。 「後、半日。がんばろ」 朱里は小さく呟くと、戦場へ足を向けた。
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