Four sideB

1/1

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

Four sideB

少し遅れて、飲み会の会場に顔を出す。 課全体だから、30人ほどの少し大きめの会だった。 座敷の入り口付近で、案の定、理緒が皓太を呼び止める。 「七地さん、こっち空いてますよ」 ちらっと朱里に視線を走らせ、こちらを見ているのを目の端で確認しながら、彼女の隣に座る。 「さんきゅー。お疲れ」 「お疲れ様です。七地さん、何飲みます?」 「とりあえず、ビールで」 彼女の取り分ける料理を、にこやかに受け取る。 (朱里、なんか言えよ。・・お前の気持ちが、知りたいんだよ。我慢しないで聞かせてくれよ・・) 朱里が悲しそうに溜息をついているのを見ていたら、不意に馬鹿馬鹿しくなった。 なにも、朱里に嫌な思いをさせたいわけじゃない。 立ち上がって、朱里のところに行こうとした瞬間、高槻が彼女の隣に座った。 (なんだよ、アイツ) 皓太はイラッとする気持ちを押し殺す様に、ビールを煽った。 「・・なんですよ、酷いと思いません?」 よくわからないが、ほんのりと頬を紅く染めた理緒が、上目遣いに彼を見ていた。 「あ、うん、思うよ」 にっこり笑って、適当に相槌をうつが、サッパリ話が頭に入ってこない。 ヤキモチを妬かせようとしていたはずなのに、まさか自分がイライラと朱里を見つめる羽目になろうとは。 その間にも、高槻がじりじりと朱里との距離を詰め、壁際に追いやっているのが、わかる。 「・・なんなんだ、アイツ」 そう呟いた瞬間、高槻がこっちをみて好戦的に笑った。 「・・!」 「七地・・さん?」 顔色の変わった皓太を不思議そうに理緒が見上げる。 が、皓太はそれどころじゃない。 (アイツ、本気で朱里を口説いてるのか?!) 覆いかぶさるような体勢の高槻の背中で、朱里の表情が見えない。 もしかしたら、朱里ももう自分を諦めてアイツとー? 次の瞬間、テーブルを跳ね飛ばし、立ち上がっていた。 周りの視線が一気に自分に集中したのがわかるが、そんなことはもうどうでもよかった。 皓太が足早に二人に歩み寄ると、そのまま強引に高槻を押しのけ、朱里の腕を掴む。 「こ・・七地さん」 朱里が掴まれた腕と皓太の顔を交互に見ながら、戸惑うように視線を泳がせる。 「ちょっと借りる」 皓太は高槻をジロリとみ、有無を言わさぬ口調でそういうと、返事もまたず朱里を引っ張って、みんなが面白そうに成り行きを見守る部屋を出た。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加