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コツンコツン、と革靴が作る音に似たものが響く。音が大きくなるにつれ、自然とにじみ出る嫌な汗。
「斗真さん、どこにいますか?」
その問いかけですら俺を仕留めるために位置を把握しようとしているような、そんな不気味なものに思えてきてしまう。
「斗真さん?」
返事をしない俺にもう一度祐が問いかける。黙っているわけにもいかない、か。もし彼が本当に俺と同じように誰かに連れてこられたのだとしたら、不安で怖くて仕方がないに違いない。表面上では冷静を装っていたとしても。俺は決意を固め、口を開いた。
「いたっ!!!ちょ、痛いなに!!!!!」
しかしその言葉は俺の口からでることはなく、突然響いたその叫びにも似た声にかき消される。
「え?!うわっ誰?!」
ドタン、と誰かが転んだような音がした。
「今なんか、踏んだ......]
呆けたような祐の声がした。俺らのほかにも誰かいる。女の人だ、けれどこの暗闇の中では彼女がどこにいるのかさえつかめない。
「なんかって人を踏んどいてそれはないでしょ。誰よ私を踏んだのは!顔を見せなさいよ顔を!!!」
ヒステリックな女の声。俺はどうにもこの声が嫌いだった。耳を突くような、落ち着きのない音。
「あれ?何も見えない。てかここどこよ」
自分の置かれた状況がまだ理解できたないのだろう、その彼女にこたえるように祐が口を開く。
「僕たち誘拐されたんです。」
「おい祐、まだ誘拐って決まったわけじゃあ」
「いいえ、それ以外にこの状況を説明できるものなんてありません。僕たちは誘拐されたんです。あの、さっきは本当に申し訳ありませんでした。けが、してないですか?」
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