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正直予想外だった。子供が一人いる、それだけで状況は大きく変わってしまう。そもそもなぜだ?俺と祐と女は年が割と近いような印象をうけた。だから高校生や大学生までの人間が連れてこられたのだと、思っていた。けどあの低い声と子供がいるということは、俺たちよりもずいぶんと年上だ。なぜだ、関連性が全く見つからない。なぜ俺たちはここに、連れてこられたんだ。
「はい、この子は私の子供です。さっきから息が苦しいようで、何とかしてやりたいのですがどうもあまりいい状況ではないようですね」
相変わらず力のない声だったが、さすがに俺たちよりも長く生きているだけあってその言葉はここにいる誰よりも落ち着いていた。いや、祐には劣るかもしれない。そういえばどうしてあいつはこんなにも冷静なんだろう。あの落ち着きようは異常だ。あんな風に声色一つ変えず冷静さを失った女の口を塞げるものだろうか。いいや、よそう。今はこんなことを考えている時じゃない。
「はい。出口も何も見つからないし、この空間がどれほどの大きさなのかもわかりません。もちろん俺たちも連れてこられた側です」
「やっぱりそうですか。私にも状況がさっぱりで......。これって誘拐ってやつですよね」
「たぶん。」
「いったい誰がこんなことを......私たちのほかにも誰かいるんですか?」
「いや、まだ全員かどうかは分からないですけどとりあえず俺、斗真っていいます。大学生です」
「僕は祐です。高校生です」
高校生、そうだとは思っていたが改めて祐の口からでると信じられない気持ちがふきだしてくる。今どきの高校生は、なんて言葉では片づけられない気がした。
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