――櫻井 彩夏

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「ね、ねえ、何処に行くの?」 私の背中を押している筒状布娘の1人、由美子に話し掛けてみた。 由美子は、私に『禿げんダッツ ホワイトハニージンジャー』を渡してくれた筒状布娘。マイクロバスの中で、仲良くなった。 「うふふ。彩夏はね、これから八雲様に愛でて貰えるの!きゃーっ!」 あの個性的な八雲様に愛でて貰える? 嫌だ。八雲様は趣味じゃない。キモい!と思った瞬間。 その気持ちは何かに押さえ付けられ封じられ。 「愛でて貰える何て、嬉しい……」 私は、そう呟いた。 「でしょー!八雲様は私達の全てだから!」 名前を知らない、茶髪ロングの筒状布娘が満面の笑みで『八雲様は全てだから』と答えた。全て…… もやもやする。心の奥底で警鐘が鳴り響く。 ―――いけない。このまま進んだら、戻れなくなる。逃げなきゃ、逃げなきゃ!! 私の深層部で私が叫ぶ。 ―――逃げなきゃ!早く逃げなきゃ!! でもその度に、深層部の私が淡い輝きに押さえ込まれる。 禿げんダッツの当たりから放たれた、あの輝きだ。 ―――愛たい。八雲様に愛たい! 嫌だ!駄目だ!逃げなきゃ!! 「着いたよ~!」 由美子の声で我に返ると、30帖位の大きな部屋の真ん中に私達は立っていた。 目の前に有るのはキングサイズの高級そうなベッド。 ここで、八雲様に愛でて頂ける…… 嫌だ!嬉しい!嫌だ!嬉しい! 自分では無い自分の感情に支配される感覚。気持ち悪い。目が回る。 「きゃーっ!八雲様ぁ!!」 筒状布娘達の黄色い声がして後ろを振り返ると、部屋の中に八雲様が入ってきた所だった。 思わず一歩、後ずさる。 嫌だ!嬉しい!嫌だ!嬉しい! 一歩、また一歩と後ずさる私を見た八雲様の口角がつり上がった。 「あひゃ。新入りちゃんは術の掛かりが甘いようじゃにょー。じゃあ、特別にやっちゃおうか!やられたい人、手を上げて~!」 八雲様が叫ぶと、筒状布娘達が我先にと手を上げ「ハイ!私!私!」と叫びながら跳び跳ねた。 「んふ~。」ご機嫌な様子の八雲様が、おもむろに髪を掴み『するり』と脱いだ。テカテカの頭皮が現れる。 「じゃあ、行くにょ!」 八雲様の頭皮が淡く輝きだす。 あの輝き、見たことがある。 そう。あの輝きは、禿げんダッツの当たりカップから放たれた輝きだ。
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