――櫻井 彩夏

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「おねーさん!」 困惑している私に、筒状布を着こんだキャンペーンガールが話し掛けてきた。 「おねーさん、スッゴい痺れてたね!いーなー!気持ち良かったでしょー!」 こ、この娘は何を言っているの? まぁ、確かに、アレだったけれども…… 自分でも分かるほどに顔が火照って来て、筒状布の娘は、そんな私の顔を覗いて「可愛い」何て言ってる! 何?何なの、この状況は!? 「可愛いおねーさん。そろそろ行こっか?」 筒状布の娘が、私に手を差し伸べる。 何処へ?と、私の中で疑問符が打たれたのに、何故か私は「ハイ。」と答えて、筒状布の娘に差し出された手を握った。 甘く痺れだした身体の芯が、止まらない。 カップの底に描かれた<あたり>の文字を見て、心が踊る。 私は、どうしてしまったの? 早く行かなきゃ。 早く行かなきゃ。 何処へ? 私は何処へ、 早く行かなきゃならないの? <あたり>のカップを左手に握り締め、私は筒状布を着こんだ娘に右手を引っ張られて歩いてく。 「きゃあ!おねーさん!新入りね!」 引っ張られて来た先に、15人乗り位のマイクロバスが停まっていて、その中には10人の筒状布を着こんだ娘達が居て、 その娘達が一斉に私に手を振った。 私と、11人の筒状布を着こんだ娘達を乗せたマイクロバスが走り出す。 何故か分からないけれど、何処なのかも分からない目的地へ、早く行きたい。 マイクロバスが走る間、筒状布を着こんだ娘達の質問攻めにあったけど、私も聞きたい事が沢山有るから。だから彼女達の質問に答えながら、色々と質問してみた。 それで判った事。 まず、禿げんダッツの当たりを引いても禿げる事は無い。 何故なら此処に居る娘達の全てが、禿げんダッツの当たりを引いた娘達だから。 これから向かう先は、禿げんダッツを製造販売している『八雲製菓』の本社工場だと言う事。 『八雲』 その名を聞くと、私の芯が甘く痺れる。 何故なのかは分からないけれど、、、そう、たぶん、あの時から。 禿げんダッツのカップの底から放たれた閃光を浴びた、あの時から。 そして、彼女達は、全てを忘れて禿げんダッツ本社工場で共同生活をしていると言う。そして、当たりを引いた私も、今日からその仲間入りなのだと言う。 今日から全てを忘れる。 つまり、もう、家には帰れ無い。
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