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「とーちゃくぅー!」
筒状布娘の一人が、さも嬉しそうに窓の外を見ながら目を潤ませている。
つられて窓の外を見れば。
其処にそびえ立っていたのは八雲製菓の本社工場ビル。
此処に来るまでにスマホで調べた。八雲製菓本社工場ビルは新潟県にあり、本社、生産工場、そして一ノ瀬社長の自宅と従業員の寮も兼ねていると。
きっと私は、その寮に入るのだろうな。
「…………っつ?」
……まただ。
身体の芯が甘く痺れる。
「おねーさん!八雲様が待ってるから、行こっ!」
「あ」
2人の筒状布娘に両手を引っ張られ、私はマイクロバスから地に降りる。
爽やかな風に頬を撫でられながら、小走りに八雲製菓本社工場ビルへと向かえば、私の胸は高鳴り、またもや芯に、甘い痺れを覚えてしまう。
―――もうすぐ、もうすぐ逢える!
誰に?誰に逢える?
私は誰に逢いたいの?
八雲製菓本社工場ビルの入り口の、両開きの大きな自動ドアが音も無く開き、私達が中へ入れば、身体の芯の、甘い痺れがピークを迎える。
「…………!っ、立ってられない…………」
ヘタと座り込む私の前に、スッと、誰かが立った気配がする。
「来たわね。よちよち。」
その気配の主に、よちよち言われながら頬を撫でられた瞬間に、
私の頬を伝う、涙
分からない。私は、何故泣いているの?
私は、何故此処に来たかったの?
「あひゃひゃ。よく来たにょ。私が八雲ぢゃ。」
「八雲……様……?」
その名前を聞いた瞬間に、私の涙腺が更に崩壊した。
ああ。そうか。今 判った。私は、八雲様に逢いたかったのか。
八雲様が、優しく手を取り、私を立たせて下さった。
被ってるっぽい頭髪は『八』の形で
その下に太く繋がった眉毛。
あら?太く繋がった眉毛の下に、
もう1対の眉毛が有るわ?
変わったデザインの顔ね。
更に燐とした鼻筋は、太く繋がった方の眉毛と繋がっている。
斬新だわ。
そんな斬新な鼻筋の下にはタラコ唇と
『ム』の形をした髭。
丸みを帯びた、優しそうな輪郭と、横長の瞳が美しい。
八雲様!逢いたかった!
何故なのかは分からないけれど、逢いたかった!
「ん。ぢゃ、早速、愛部屋へ連れて来るのぢゃ。」
八雲様が、傍に居た筒状布を着た娘にそう告げると、廻りを取り巻いていた筒状布娘達が、ワラワラと私を取り囲み
「おめでとう!」
「頑張るのよ!」
とか言いながら、私の背中を押して行く。
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